東大、赤さび(酸化鉄)を改良して太陽光エネルギー変換効率アップに成功

 東京大学は、同大学工学系研究科の田畑 仁教授、関 宗俊助教らの研究グループが、“赤さび(酸化鉄)”を改良することで、高効率の太陽光発電に成功したと発表しました。

 色素増感型太陽電池などに用いられる光触媒は、1972年にHonda-Fujishima効果が発見されてから、世界中で精力的に研究が進められてきました。

 特に研究が活発に行われてきたのが酸化チタン(TiO2)であり、既に様々な分野で実用化されています。

 光触媒として優秀な酸化チタンですが、利用できる光が波長が 380nm以下の紫外光のみであり、太陽光エネルギーの大部分を無駄にしているという問題点も有しています。

赤さびの優れた特性

 酸化チタン同様、古くから半導体光電極の候補として注目を集め、世界中で膨大な数の研究が行われてきた材料のひとつに赤さび(α-Fe2O3)があります。

 日常で最も目にすることが多い酸化物である赤さびは地球上に無尽蔵に存在し、無毒で環境の親和性に極めて優れており、また、酸化チタンと異なり可視光を吸収するという優れた特性を持っています。

 しかし、赤さびを用いても、可視光のうち600nm 以上の波長の光は透過してしまい、太陽光エネルギーの多くの部分を無駄にしてしまうという課題は残されたままとなっていました。

ロジウムによる置換で課題を解決

 この課題に対して、東大の研究グループでは、電子論的見地から研究を行い、赤さび(α-Fe2O3)の Fe の一部を Rh(ロジウム)で置換すると、バンドギャップを小さくし、光吸収を起こす波長範囲の拡張が可能なことを発見しました。

 今回の研究では、Feの10%をRhに置換することで、バンドギャップが600nm相当の2.2eVから950nm相当の1.5eVへ減少し、可視域だけでなく近赤外域でも光吸収が起きるようになることが確認されています。

結晶工学的な観点からの改良

 今回発表された研究では、α-Fe2O3の以下のような結晶光学的特性を利用して一部をRhで置換したα-Fe2O3の結晶構造の最適化を図ることで、光電特性が向上することも確認されています。

  • 異方的な電気伝導性を示す
  • [110]方向に最もキャリアが動きやすくなっている

Rh置換α-Fe2O3湿式太陽電池の光電特性
Rh置換α-Fe2O3湿式太陽電池の光電特性
画像提供:東京大学

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