産総研、酸化チタン系の複合金属化合物薄膜を応用した低コストPID対策技術を開発
独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)は、サスティナブル・テクノロジー株式会社と共同で、酸化チタン系の複合金属化合物薄膜をガラス基板にコーティングして、結晶系シリコン太陽電池のPID現象による出力低下を抑制する技術を開発したと発表しました。
PID(Potential-induced degradation)現象とは、 高温・高湿などの環境下で、太陽電池モジュール内部の太陽電池セルと、接地されたモジュールのフレームとの間に高電圧がかけられた場合に発生することがある、出力が大幅に低下現象です。
PID現象は、太陽光発電システムの普及量が多いヨーロッパを中心に、メガソーラーなどのシステム電圧の高い太陽光発電システムでの発生事例が報告されており、その主原因は、ナトリウムイオンなどのガラス基板からの拡散であると考えられています。
今回、産総研で開発された技術は、下の図のように太陽電池モジュールに使用されるガラス基板に酸化チタン系複合金属化合物の薄膜をコーティングすることで、ナトリウムイオンなどのガラス基板からの拡散を抑制するというものです。
一般的な太陽電池モジュール(左)とPID現象対策を施したモジュール(右)の構造
画像提供:独立行政法人産業技術総合研究所
一般的な構造の太陽電池モジュールとPID対策を施した太陽電池モジュールのそれぞれに、以下の条件におけるPID試験を実施しその前後の出力特性を評価したところ、酸化チタン系薄膜をコーティングしていない一般的な構造の太陽電池モジュールでは、PID試験前に15.9%であった変換効率が0.6%へ大幅に低下したのに対し、酸化チタン系薄膜によるPID対策を施した太陽電池モジュールでは、変換効率の低下がわずかなものとなり、今回の対策が有効であることが確認されています。
PID試験の条件
- 電圧:1000V
- 温度:85℃
- 時間:2時間
産総研によれば、今回発表された技術は、原材料じたいが低コストで使用量も少なく、製膜工程は低温で比較的簡単実施できることから、低コストPID対策の有望な候補の一つと期待されるとのことです。