東北大学、太陽電池用の擬似単結晶シリコンインゴットの育成に成功
東北大学は、同大学金属材料研究所の米永一郎教授、沓掛健太朗助教らの研究グループが、太陽電池用結晶の斬新な育成法を考案し、擬似単結晶呼ばれるシリコン結晶の育成に成功したと発表しました。
現在流通している太陽電池用ウェハーのうち約50%を多結晶シリコン製のものが占めますが、多結晶シリコン製のセルは単結晶製のものと比べて変換効率が劣るため、この点を解消し且つ単結晶セルよりも低価格で製造できるシリコン系の太陽電池セルが求められています。
このような中、そのニーズを満たすことが可能な材料として擬似単結晶が有望視されており、世界各国で研究開発が加速しています。
この擬似単結晶とは引き上げ法(CZ法)を用いずに作られる単結晶インゴットで、モノキャスト、シードキャスト、モノライク結晶などとも呼ばれています。
その製法は、多結晶シリコンと同様にルツボ中で融解させたシリコンを凝固させて結晶を成長させる方法を用いますが、ルツボの底に単結晶シリコンの種結晶敷き、種結晶の有る底の方から徐々に上部へ結晶を成長させることで、結晶の成長方向が一定となり単結晶のインゴットを作ることができます。
CZ法を用いず比較的低コストで製造できる擬似単結晶ですが、現在一般に用いられている製法では、シリコン融液から種結晶を使って擬似単結晶を育成する過程で、ルツボに接する部分から種結晶とは別の方位の結晶粒が多数発生してその占有部分が拡大する「多結晶化」が大きな問題となっています。
今回、東北大学の研究グループでは、この問題の克服のために、種結晶を複合させて人工的な結晶粒界を形成し、この粒界を利用して擬似単結晶の歩留まりを低下させる多結晶領域の拡大を抑制する方法を考案しました。
現状では多結晶化インゴットからの擬似単結晶ウェハーの歩留まりは36%となっていますが、今回考案された方法を用いると100%に近い歩留まりで擬似単結晶ウェハーを製造できる可能性があるとのことです。