富士経済、2012年の太陽電池世界市場を出力ベースで21%増の見込みと発表
株式会社富士経済は、今年4月から7月にかけて、低価格化が進みFIT(固定価格買取制度)などの優遇政策に依存しない自律的な市場拡大への方策が求められる太陽電池関連の世界市場について調査を実施し、この結果を報告書「2012年版 太陽電池関連技術・市場の現状と将来展望 上巻」にまとめたと発表しました。
この報告によれば、2012年の太陽電池の世界市場は前年比で出力ベースでは21%増、金額ベースでは25%減が見込まれています。
出力ベースでは、全体をリードしてきた欧州市場において2011年後半、2012年とFITの引下げや補助削減策が相次いだことから、2011年は駆け込み需要により拡大したものの、2012年は縮小が見込まれています。しかし、需要地確保や現地企業育成等の観点から優遇政策の導入を進める中国、太陽光発電システムにとって良好な条件が整っているアメリカやインド、FITが開始された日本などでの需要が拡大しており、短期・中期的にもこれらの需要が市場を牽引し、2012年は40,105MWが見込まれています。
なお、導入量ベースでは、2011年29,728MW、2012年33,000MW(見込)、2030年120,000MW(予測)と見られるとのことです。
一方、金額ベースでは、太陽電池価格の下落により縮小が見込まれており、価格下落の要因は在庫量の増加と原料安などの製造コスト低減が挙げられています。需要は拡大しているものの供給量ほどの拡大は見られず、在庫量が上昇していることから、販売先を確保するため、価格競争が激化し、また、結晶シリコン太陽電池の生産量増加を見越し、ポリシリコンメーカーが生産能力増強を実施したものの、太陽電池の需要が想定したよりも伸びなかったため、供給過剰となったポリシリコン価格が下落しており、これにより結晶シリコン太陽電池の価格が下がり、薄膜シリコン太陽電池やCIGS太陽電池など価格の安さで対抗してきた他の太陽電池の価格も更に押し下げられる流れになっているとのことです。
近年右肩上がりで市場拡大が続いていると見られがちな太陽電池市場ですが、実際には2009年も2012年と同様に出力ベースでは拡大したものの金額ベースでは縮小するという事態に見舞われていました。これは2008年に単年導入量の半数を占めたスペインでFIT制度改正によるインセンティブ引下げによって需要が冷え込み、ポリシリコンの価格が急落、太陽電池の価格も半値近くに下落し、市場が縮小したためとされています。しかし、太陽電池価格の下落が2010年以降の高成長に結びついたという見方も多く、今回も太陽電池の低価格化による需要喚起が期待されるとのことです。